銀河系の観測


51: 星間物質         52: 宇宙塵         53: 宇宙線         54: ニュートリノ         55: 電波望遠鏡         56: 分子雲         57: 原始星         58: スペクトル型         59: 主系列星         60: 褐色矮星         61: 赤色巨星         62: 白色矮星        


51: 星間物質

   恒星と恒星の間に存在するごく希薄な物質のこと。 星をつくる材料となるガスと固体のちり粒子(宇宙塵)からなる。 ガスの化学組成(重量比)は水素73%、ヘリウム25%と、 二つが圧倒的に多い。その他の元素としては酸素、 炭素、窒素、ネオン、マグネシウム、ケイ素、硫黄、鉄などが存在する。 水素とへリウム以外の元素を、「重い元素」とか「重元素」とよんでいる。 星問物質の典型的な密度は、1立方センチあたり水素原子1個程度と、 かぎりなく真空に近い。地球上の実験室でつくられる真空は、 これよりも密度が高い。しかし銀河系全体の星間物質の質量は、 恒星の総質量の約10%を占めるほどである。
   銀河系内の星間物質の温度と密度は、きわめて広い範囲にわたっている。 星が生まれる直前の「分子雲コア」(高密度なガス塊)は、 温度10〜30Kで、密度は1立方センチあたり水素原子が1万個以上ある。 一方、1立方メートルあたり1原子と低密度で、1億Kという高温の領域もある。

52: 宇宙塵

   星間空間に散らばる固体の微粒子(ちり粒子)のこと。 ガスとともに星間物質を構成する。 大きさは平均して1万分の1ミリ。 一辺が100メートルの立方体の中に1個程度の割合で存在する。 ちり粒子は、光よりも波長の長い赤外線を放射したり吸収したりしている。 赤外線の観測から、主成分が一酸化ケイ素や二酸化ケイ素からなるケイ素系と、 炭素・酸素結合を合む炭素系、および氷の3種があることがわかっている。
   ケイ素系や炭素系のちり粒子は、恒星の晩年期の姿である赤色巨星や、 超新星爆発などでつくられ、宇宙にほうりだされる。 これらは星間空間をただよい、やかてガスとともに集まって分子雲を形成する。 また分子雲の中では、ちり粒子にさまざまな分子が付着して、 炭素系ちり粒子や氷が成長していく。
   分子雲の中で成長したちり粒子は、星の誕生とともに一部は 惑星の材料となっていく。木星や土星の衛星の地殻をつくる氷も、 元はといえば分子雲中でつくられたものである。

53: 宇宙線

   宇宙空間を光に近い速度で飛びまわっている高エネルギーの微小粒子のこと。 地球で観測される宇宙線の強度は、宇宙のどの方向でも一様である。 主成分は各種の裸の原子核で、約90%が陽子(水素の原子核)、 5%がアルファ粒子(へリウムの原子核)、 残りをリチウムから鉄に至る原子核が占める。 地球大気に入射してくる宇宙線は、 1平方センチあたり毎秒1個程度である。
   宇宙線が地球の大気を通ると、大気中の原子核と衝突して パイ中間子、電子、二ュートリノなどの素粒子が発生する「空気シャワー」を 引きおこす。これを「2次宇宙線」といい、 宇宙空間の宇宙線を「1次宇宙線」といって区別している。
   1次字宙線は、重い星が最後におこす超新星爆発の産物と考えられている。 爆発の際に発生する衝撃波や磁場のエネルギーが宇宙線の加速に 使われるようだが、加速のメカニズムはよくわかっていない。 また1次宇宙線は、星間ガスと衝突してガンマ線を発生している。

54: ニュートリノ

   軽い素粒子の一種で、電荷をもたない。 電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノの3種がある。 ニュートリノはほかの粒子と反応する力が非常に弱く、 検出するのが非常にむずかしい。
   恒星は核融合反応によって輝く。この反応にともなって、 大量のニュートリノ(電子ニュートリノ)が放出される。 太陽からやってくるニュートリノの量をはかると、 内部の核反応のようすがわかる。 しかし検出されるニュートリノの数は、 理論から予想される数の3分の1である。 この矛盾は長い間問題になっていた。 ごく最近、これは質量をもたないと考えられていたニュートリノが 質量をもっているためだとする観測結果を、日本の研究グループ( スーパーカミオカンデ )が発表した。
   重い星が進化の最後におこすI型超新星爆発では、 膨大な工ネルギーが解放される。 そのほとんどは、ニュートリノとして放出される。 1987年2月、大マセラン雲でおきた超新星爆発のときに発生した ニュートリノが、日本で検出された。

55: 電波望遠鏡

   天体から発せられる電波を観測する装置。 パラボラアンテナで天体を追尾し、焦点に集まる電波を 受信・増幅・検波する。単一パラボラで最大のものは、 ドイツにある口径100メートル鏡。 1982年に関設した日木の国立天文台野辺山宇宙電波観測所の 口径45メートル鏡は、ミリ波領域では世界一の性能をもつ。
   電波放射は大きく分けると、熱運動によるものと、 非熱的な原困によるもの(シンクロトロン放射など)がある。 熱的電波は低温の物質から放射される。 たとえば,低温の分子雲や星間空間に存在する希薄なガスから放射される。 電波望遠鏡では、これらのガスの分布や運動がみえる。 また、長波長の電波は星間吸収をほとんど受けないので、 銀河系全体も見通すことができる。その結果、銀河系の構造が明らかにされ、 また星生成領域でぱ星が誕生するガス円盤などが発見された。
   超新星爆発で生じる非熱的電波は、 「超新星残がい」から非常に長い間観測することができる。

56: 分子雲

   星間ガスが高密度に集まったもので、水素分子を主成分とする。 温度は数K〜100K程度、密度は1立方センチあたり水素分子が 0.1〜100個程度。大きさは数光年から数百光年程度である。
   分子雲の密度は星間空間の平均密度の100倍以上も高い。 そのために、水素原子はほとんど水素分子になっている。 なかでも高密度の「分子雲コア」では、 単純な分子から複雑な分子への変化がおきている。 これまでに100種以上の分子が発見されている。
   オリオン星雲やオメガ星雲のような輝線星雲は、 分子雲をともなっていることが多い。 これらの領域では星が連鎖的に生まれている。 若い高温の星は紫外線を強く放射し、まわりのガスを 高温の電離ガスにかえる。電離ガスは高速で膨張し、 分子雲を圧縮して分子雲コアをつくる。 そこで高温の星が生まれ、分子雲を侵食するように新しい電離領域ができる。 同じようにして、分子雲中では星の生成がくりかえされていく。

57: 原始星

   恒星に成長する前段階で、赤外線で輝いている天体のこと。 その放射エネルギーは太陽の数万倍も強い。
   恒星は分子雲中の高密度な「分子雲コア」が自己重力で 収縮して誕生する。収縮にともなってガスが中心部に集中し、 原始星ガス円盤か形成される。円盤の厚みは回転にともなって しだいに薄くなり、中心部は高密度になる。 さらに収縮が進むと、円盤の中心に原始星ができる。 原始星の収縮によって膨大な熱(重力エネルギー)が生みだされ、 これが赤外線として放射される。星のまわりのガスは ジエットとなって噴きだす。
   原始星か放射する赤外線は、最初のうちガス円盤中のちり粒子に 吸収されてしまうので、原始星の姿を外からみることはできない。 しかし、しだいに赤外線は外にもれてくるようになる。 やがて原始星の収縮がとまり、中心部で核融合反応がはじまる。 その結果、光か強く放射される。これが星の誕生である。 原始星ガス円盤の赤道面にはちり粒子が沈殿し、惑星系がつくられることもある。

58: スペクトル型

   スペクトル線の種類や強度分布によって 恒星を分類したもの。スペクトル線のみえ方は、 星の元素組成によるほか、星の表面温度や 表面重力によってかわるので、 その特徴によってスペクトル型を決めている。 たとえばO型では、電離ヘリウム、高電離の酸素、 窒素、炭素などのスペクトル線がある。
   スペクトル型を表面温度の高いほうから順に並べると、 O、B、A、F、G、K、Mとなる。 O型の星の表面温度は約5万K、 M型は約3500K。 太陽はG型で、表面温度は5780Kである。 また星の色は表面温度によってことなるので、 スペクトル型から星の色を知ることもできる。 O型やB型の星は青白く、A型、F型は白色、 Gは黄色、K型はオレンジ色、 M型は赤色と変化していく。太陽は黄色の星である。 このほか、特異な化学組成を示すR型、N型、 S型などがある。
   同じスペクトル型でも、半径の小さい矮星(主系列星)と、 半径の大きい巨星がある。

59: 主系列星

   星を明るさと表面温度の関係であらわす HR図(ヘルツシユプルング・ラッセル図)の 対角線上に並ぷ星をいう。 HR図は、横軸に恒星の表面温度やスペクトル型を、 縦軸に星の光度をとり、恒星をプロットしたものである。 銀河系の恒星の90%程度が、 このグラフの左上の明るく青白い星から、 右下の暗くて赤い星へかけての対角線上に並ぷ。 この線を「主系列」とよんでいる。 太陽は典型的な主系列星である。
   主系列星は、星の中心部で水素を燃やして ヘリウムにする核融合反応の出すエネルギーで みずからの重さを支え、安定に輝いている。 星は一生の大部分を主系列星としてすごす。 その寿命は質量によってことなり、 質量が大きいほど寿命は短い。 太陽程度の質量の星は約100憶年の間 主系列にとどまる。その後は地球軌道よりも 大きく膨張して「赤色巨星」になる。 HR図の上では、主系列から右上へ移動していく。 そして、水平方向にしだいに左に移り、 やがては左下方の「白色矮星」になる。

60: 褐色矮星

   太陽の8%以下の質量を持つ小さな星。 恒星と惑星の間に位置する第三の 天体として注目されている。
   褐色矮星は、中心部の温度が核融合反応が おきるほど高くならない。 このような星は、自己重力によって収縮するときに 熱を解放して赤外線で輝く。 しかし、その工ネルギーを使い果たしてしまうと、 暗黒の天体となる。そのため、 ダークマターの有力候補の一つと考えられている。 恒星の数は小質量のものほど多くなる。 このことが褐色矮星にもあてはまれば、 膨大な数の褐色矮星が存在することになり、 ダークマターとなる可能性があるからである。
   1995年末にカリフオルニアエ科大学の 中島紀らのグループが、「GI229B」 という星が褐色矮星であることをはじめて確認した。 この星の光度は太陽の10万分の1にすぎない。 地球からの距離は19光年、半径は木星程度、 重さは木星の20〜50倍。 これまでに10個の褐色矮星か確認されており、 今後の観測により多数発見されると予想される。

61: 赤色巨星

   半径が大きくて、表面温度が低く赤い星。 その半径は太陽の数百倍、地球軌道ほどにもなる。 スペクトル型は表面積はK型、M型 (表面温度5000〜3000K)。 さそり座のアンタレス、うしかい座の アルクトゥルス、オリオン座の ベテルギウスなどがよく知られている。
   恒星は、中心部の水素の燃焼 (核ら融合反応)によって主系列星として にとけこ長い間輝きつづける。 しかし、水素を燃焼しつくしてしまうと、 中心のヘリウムのしんが収縮し、 一方、星の外層はどんどん膨張していく。 これが「赤色巨星」である。 赤色巨星は表面積が大きいので、 きわめて明るくみえる。 古い星が多く集まる銀河系のバルジや 球状星団の光のほとんどは、赤色巨星による。 また低温なので、赤外線を強く放射している。
   赤色巨星では、重力の弱い表面から大量のガスが 流れだし、宇宙空間にとけこんでいく。 外層のガスをすべて失うと、収縮した中心部が 「白色矮星」として残る。太陽も数十億年後には 赤色巨星になるだろう。

62: 白色矮星

   地球ほどの半径しかないが、 質量は太陽ほどもある高密度 (5×108キログラム/立方メートル)の星。 おおいぬ座のシリウスの伴星、 こいぬ座ののプロキオンの伴星のほか、 数百個の重さを覆が知られている。
   白色矮星の表面温度は1万K以上という高温である。 しかし表面積が小さいので、暗くて発見しにくい。 シリウスとその伴星は連星である。 高密度な白色矮星は重力が強く、 シリウスの軌道運動に影響をあたえている。 この運動の乱れから白色矮星の 伴星が存在することがわかった。
   白色矮星は、太陽の数倍以下の質量の星が 進化した最後に残されたコアである。 中心のコアは、みずからの重さを電子の縮退 (電子をこれ以上つめこめないほど つめこんだ状態)圧で支えるところまで 収縮して白色矮星となる。 白色矮星の内部では核融合反応はおきない。 内部の熱エネルギーを光として 放出していくにつれて、温度は下がっていく。 その色も黄色から赤色にかわり、 最後には黒色矮星となってみえなくなる。