宇宙の誕生と未来


91: 宇宙創生         92: インフレーション宇宙論         93: 子宇宙         94: ビッグバン         95: 宇宙背景放射         96: 宇宙の晴れ上がり         97: 宇宙の年齢         98: 階層構造の形成モデル         99: ホーキング放射         100: 宇宙の未来


91: 宇宙創生

   最新の理論によれば、宇宙は「無」から生まれたと 考えられている。「無」とは、時間や空間、物質、 エネルギーのない状態である。
   「無からの宇宙創生」は量子論によって説明される。 非常に短い時間の中では、時間や空間、エネルギーは 一つの値をとれずに、たえずゆらいでいる。 ここから超ミクロな宇宙が「トンネル効果」によって 突然生まれてくる。トンネル効果というのは、 ミクロな粒子がごく小さい確率ではあるが、 通常では通れないエネルギーの壁を通り抜ける現象である。 宇宙がより小さいほど、また真空のエネルギーがより高いほど、 トンネル効果によって宇宙が生まれる確率が高いことを、 1983年にアレキサンダー・ビレンキンが提唱。 スティーブン・ホーキングは、宇宙の波動関数式をといて、 量子論的に最も確率の高い宇宙の進化過程がビレンキンの宇宙と 一致することを示した。
   こうして誕生した宇宙は、量子論的に可能な最小の長さの 10-34センチという超ミクロであった。

92: インフレーション宇宙論

   宇宙誕生の瞬間から10-44秒後に、急激な膨張「インフレーション」が おきたとする理論。1981年に東京大学の佐藤勝彦と アメリカのアラン・グースがほぼ同時に提唱した。
   誕生直後の宇宙は、高い真空のエネルギーをもっていた。 このエネルギーは、アインシュタインが重力方程式に加えた 宇宙項と同じように、空間を急膨張させる。 これがインフレーションである。インフレーションによって 宇宙の温度があるところまで下がると、 高いエネルギーの真空がエネルギーの低い新しい真空へと相転移する。 水が氷にかわる相転移と同じように、宇宙の相転移でも、 新しい真空と古い真空のエネルギーの差が熱として解放される。 この熱い宇宙が「ビッグバン」である。
   インフレーション理論は、現在の宇宙の温度がどこでもほぼ同じで、 なぜ平らなのかを説明してくれる。原初の宇宙に凹凸があったとしても、 その一部分の平らなところが急膨張によってのばされ、 それがわれわれの字宙になったというのである。

93: 子宇宙

   宇宙初期の爆発的な膨張「インフレーション」のときに、 親宇宙から生まれる独立した宇宙。
   インフレーションの間、宇宙では真空の相転移がおき、 真空のエネルギーが高い状態からより低い状態へ変化する。 真空の相転移は宇宙全体でいっせいにおきるわけではない。 水が凍るときにまず小さな氷の核ができ、 それかしだいに広がっていくように、古い真空の中に 新しい真空の領域が次々にできて泡のように広がっていった。
   新しい真空の泡は、それぞれ光速で膨張しいく。 そして古い真空の領域を押しつける。 そのとき、古い真空はインフレーションをおこし、 別の「子宇宙」へと進化する。この子宇宙は親字宙とは まったく別の宇宙で、「ワームホール」という時空の トンネルでつながっている。
   子宇宙自身もインフレーションをおこし、 同じようにして子字宙から「孫宇宙」が生まれる。 こうして宇宙は無限に発生する。われわれの宇宙もその中の一つと考えられる。

94: ビッグバン

   宇宙の誕生直後の急激な膨張(インフレーション)によってできた 超高温の宇宙。「ビッグバン」はもともとは爆発的な膨張をあらわすが、 1940年代後半に提唱されたビッグバン理論では、宇宙誕生直後の 無限大のエネルギーや急激な膨張の起源を説明できなかった。 インフレーション宇宙論(1981年)や量子論によって、この問題が解決された。
   現在では、宇宙誕生直後にインフレーションがおこり、10-34秒後、 真空の相転移によって莫大なエネルギーか解放され、宇宙は光に満たされた。 これがビッグバンと考えられている。ビッグバン宇宙の光から、 すべての物質のもとになるXホゾンなどがつくられた。 やがてこれらの素粒子はこわれ、クォークとレプトン、 それらの反粒子が生まれた。特殊相対性理論によると、 エネルギーは物質にかわりうるし、その逆もおこりうる。 そのころの宇宙では、光から素粒子と反粒子が対生成され、 また素粒子と反粒子が対消滅することがくりかえされていた。

95: 宇宙背景放射

   宇宙全体を一様に満たしている放射のことをいう。 1965年に、アルノ・ぺンジアスと ロバート・ウィルソンによって電波放射として発見された。
   ビッグバン仮説によれば、宇宙初期は超高温であり、 放射は物質と平衡状態にある「黒体放射」であった。 その後の膨張によって温度が下がり、 ある時期(宇宙の晴れ上がり)に放射と物質の平衡がくずれた。 その時点の黒体放射は膨張にともなう赤方偏移によって波長がのび、 現在は放射強度のピークは電波領域にある。 この理論的に計算された放射の温度と、 観測された電波の温度(3K)が一致し、宇宙背景放射は ビッグバン理論の有力な証拠となった。
   その後観測された宇宙背景放射は、宇宙のどの方向でも均一であった。 ところが、銀河や銀河団といった宇宙の構造をつくるには、 初期にゆらぎがなければならない。1990年代になって、 探査衛星(COBE)が10万分の1程度というわずかな 温度のゆらぎを発見し、構造形成理論に大きな手がかりをあたえた。

96: 宇宙の晴れ上がり

   宇宙の中で光が自由に飛ぴまわれるようになり、 遠くまで見通せるようになったときのことをいう。 宇宙誕生の約30万年後に晴れ上がった。
   宇宙の物質は、誕生後の3分間でつくられた。 現在の物魔のもととなったクォークとレプトンが生まれ、 次いでクォークが3個集まって陽子や中性子ができた。 さらに陽子と中性子が結合して重水素やへリウムの原子核が つくられた。この時期の宇宙では、光は電子に散乱されて 直進できず、宇宙は不透明であった。
   この状態は宇宙誕生の約30万年後までつづいた。 宇宙の温度が3000Kに下がると、電子は原子核にとらえられ、 原子がつくられるようになった。その結果、光が自由に 飛べるようになったのである。この瞬間に存在した放射は、 しだいに波長かのび、温度3Kの黒体放射として今も宇宙を満たしている。 これが「宇宙背景放射」である。
   晴れ上がった宇宙では、星や銀河、銀河団といった現在みられる天体が つくられていったと考えられる。

97: 宇宙の年齢

   宇宙の年齢を見積もるためには、ハッブル定数と 密度パラメーターという宇宙の構造を決める 二つの数を求めなければならない。 ハッブル定数とは、銀河が距離に比例してどれくらいの 速度で後退しているかを示す数値である。 ハッブル定数は宇宙の年齢に反比例するので、 ハッブル定数か決まれば、宇宙のおおまかな年齢が 計算できる。その値は50〜100キロ/秒/メガパーセク (1メガパーセクは326万光年)と考えられている。 これから計算した宇宙の年齢は、密度パラメーターの 不安定性も含めて70億〜200億年になる。
   現在、ハッブル宇宙望遠鏡を使って、より正確なハッブル定数の 測定が行われ下いる。1997年に発表されたハッブル定数は、 73±6±8キロ/秒/メガパーセクである。この中心値から求めた 宇宙の年齢は90億〜130億年。これは従来考えられできた 球状星団の年齢140億年より若いという矛盾があった。 しかし1近の観測では.球状星団の年齢はもっと若いという結果が出てきている。

98: 階層構造の形成モデル

   広大な宇宙には銀河、銀河団、超銀河団といった階層構造が存在する。 その形成モデルとしては二つの説がある。 第一のモデルは「パンケーキ・モデル」といわれ、 宇宙の泡のような大スケールの構造が最初にでき、 それが分裂して超銀河団になり、さらに分裂して銀河団になり、 最後に銀河ができるというものである。つまり、 大きな構造からしだいに小さな構造へと分化していく。
   第二の「階層的集団形成モデル」では、最初にガス雲から 銀河がつくられ、やがて銀河が寄り集まって互いの重力の 影響を受けるようになり、銀河団ができる。同じようにして 超銀河団がつくられていく。この過程で、重力が物質を 引き寄せてしまうため、ボイドもできる。このモデルでは、 小さい構造がまずできて、しだいに大きな構造へと進んでいく。
   最近では,コンピューター・シミュレーションによって いろいろな銀河の形成モデルの予測を計算し、 観測と比較してモデルの検証を行うことができるようになりつつある。

99: ホーキング放射

   ブラックホールが放出するエネルギーのことをいう。 1974年にブラックホールの蒸発を提唱した、 スティーブン・ホーキングにちなんで名づけられた。
   ブラックホールの温度は、宇宙の温度よりほんのわずか高い。 周囲より温度の高い物体は、外に熱を放出する。 これはブラックホールにもあてはまり、わずかずつではあるが、 最終的にはその膨大なエネルギーがすべて放出される。 ブラックホールが完全に蒸発するには、 10億年の10億倍もの時問がかかる。
   宇宙初期のインフレーションの最中には、 多数の「ペア・ブラックホール」ができると考えられる。 この中のミクロなものは蒸発するが、巨大なものは太っていく。 そのようなブラックホールがあったとしたら、 宇宙の進化に大きな影響をおよぼす。しかし、われわれの宇宙には 太っていくフラックホールは存在しない。
   現在蒸発しつつあるブラックホールの存在は、 ガンマ線バーストなどから観測される可能性かあるが、 まだ見いだされていない。

100: 宇宙の未来

   宇宙は誕生以来これまでずっと膨張をつづけてきた。 今後もずっと膨張しつづけるのか、それともやがて収縮に転じるのかは、 「密度パラメーター」の値によってことなる。 密度パラメーターとは、宇宙全体の質量密度と宇宙の崩壊に必要な 臨界密度との比で、ハッブル定数とともに 「アインシュタインの方程式」に入る基本定数である。 この値が1より小さければ宇宙は開いており、 永遠に膨張をつづける。1より大きければ、 宇宙は閉じていて、いつか収縮に転じる。 ちょうど1であったら、宇宙は平らであって膨張をつづけ、 無限の末来に静止する。
   宇宙が開いているか平らならば、膨張にともなって 宇宙の中はしだいに暗くなっていくだろう。星たちは自分の核燃料を 使い果たし、白色矮星や中性子星、ブラックホールにかわっていく。 やがてほとんどの星が褐色矮星となり、最終的には輝いている星が なくなる。ブラックホールでさえもゆっくりとエネルギーを 放出しつづけ、やがて蒸発してしまう。宇宙の温度は下がりつづけ、 最低のエネルギー状態となる。
   宇宙が閉じているならば、宇宙はいずれ収縮をはじめる。 銀河はどんどん近づいていき、宇宙の温度と密度は上昇する。 宇宙膨張の時間を、逆にさかのぼると考えればよい。 最終的には、宇宙全体が密度無限大の一点になる。 このシナリオは「ビッグクランチ」とよばれる。
   宇宙の運命は密度パラメーターの数値によってかわるが、 その値を決定するのはむずかしい。宇宙には光を発しない 物質「ダークマター」があり、その性質や量は未知である。 現在のところ、密度パラメーターは0.01〜1の 範囲にあるという程度しかわかっていない。