深宇宙


84: 宇宙の大規模構造         85: クェーサー         86: グレートアトラクター         87: 活動銀河         88: ダークマター         89: 一般相対性理論         90: 重力レンズ効果        


84: 宇宙の大規模構造

   銀河団よりもさらに大きな集団体系を「超銀河団」という。 複数の銀河群や銀河団からなり、その大きさは 1億光年以上となる。銀河系から距離約1億光年以内に ある銀河は、おとめ座銀河団を中心にして 「局所超銀河団」を構成している。 このほかの超銀河団としては、かみのけ-A1367、 うお-ペルセウス、うみへび-ケンタウルスなどが知られている。
   宇宙には、1億光年以上にわたって銀河がほとんどない 空洞のような領域がある。この空間を「ボイド」という。 超銀河団は糸状や板状になって、ボイドを囲むように分布している。 そのようすは無数の泡がつらなったようで、超銀河団とボイドが つくる構造が宇宙のいたるところに存在すると考えられる。 これが「字宙の大規模構造」である。
   1980年代末に,アメリカのゲラーらは「宇宙の地図」をつくった。 そこには,銀河が密に集まる壁「グレートウォール」やボイドが はっきり示されており、宇宙の大規模構造の存在が実証された。

85: クェーサー

   銀河の数千倍ものエネルギーを放つ遠方の天体。 恒星のようにみえ、電波を放射していたことから、 準恒星状天体(quasai-stellar-object:QSO)、 あるいは準恒星状電波源(quasistellar radio sources) と名づけられ、のちに略して「クェーサー」とよばれるようになった。
   1963年に最初に発見された「クェ一サー3C273」は、 宇宙の大きさを150億光年とすると距離約15億光年であったが、 その後次々に発見され、現在では140億光年のかなたのものまでが 観測されている。その数も1万1000個に達する。
   クェーサーの母体は銀河で、中心核から莫大なエネルギーが ジェットとして放出されている。エネルギー源はブラックホールである 可能性か高い。中心に巨大なブラックホールがあって、 そこに物質が吸いこまれるときに重力エネルギーが 放出されるというのである。ク工一サーと普通の銀河との関係は、 はっきりとはわかっていない。ク工一サーは形成途中の 若い銀河という考えもある。

86: グレートアトラクター

   ケンタウルス座の方向、約2億光年の距離にあると考えられている 巨大な重力場。膨大な質量をもち、それが強い重力を生じて 周囲のかなり広い空間に影響をおよぼしているらしい。 銀河系が属する超銀河団も、グレートアトラクターに 引き寄せられていると考えられている。
   銀河の速度パターンが、宇宙膨張からどれくらいずれているかを 調べるため観測をつづけていたアメリカとイギリスの 共同研究グループは、1987年に予想外の事実を発見した。 銀河系のまわりの約3億光年以内にある銀河が、 そろって宇宙の一点に向げて移動していたのである。 これが「グレートアトラクター」である。
   グレートアトラクターがあると考えられる場所は、 天の川にさえぎられて光では観測できない。このため、 その正体についてはいろいろな説が出されている。 ある研究者は、未知の目に見えない物質ではないかと考えている。 一方では、グレートアトラクター自体の存在を 疑問視している学者も多い。

87: 活動銀河

   銀河の中心核から高エネルギー電磁波を放射している銀河。 放射の特徴によっていくつかのタイプに分類される。 光の観測では普通の銀河とかわらないが、電波の観測では 爆発現象を示す強い放射がみられるものを「電波銀河」という。 ほとんどがだ円銀河である。代表的な電波銀河は、 光でみえる領域に二つの強い電波源をもつ「二つ目玉電波源」で、 は〈ちょう座Aはこの例である。
   電波とX線を強く放射し、光の偏光が強いものを 「ブレイザー」といい、だ円銀河に多くみられる。
   光で観測したとき、高速度のガスが発する スペクトル線(輝線)があらわれるものを 「セイファート銀河」という。ほとんどは渦巻銀河である。 爆発的な星の生成活動をしている「スターバースト銀河」も、 ガスの輝線を出すが、ガスの運動速度はセイファート銀河より小さい。
   クェーサーは最も活動度の高い活動銀河といえる。これらの活動銀河が、 同じ現象をおこしているのかどうかはわかっていない。

88: ダークマター

   宇宙に多く存在していると考えられるが、 電磁波を放射していないためみえない物質。 「暗黒物質」ともいう。その正体はまだわかっていない。 ダークマター候補としては.銀河のハローに存在する 小質量のMACHOや、アキシオンなどの素粒子、 ニュートリノなどがあげられている。
   銀河の中の恒星の動きや、銀河団の中の銀河の動きを調べると、 その動きにつり合うための重力を生じるには、 観測される天体だけでは不足することがわかる。 つまり、目に見えない大量の物質が存在し、 その重力の影響を受けているようにみえる。 この現象がはじめて指摘されたのは1930年代のことであるが、 その後の研究によって、宇宙の90%以上は ダークマターでできているのではないかといわれるようになった。
   日本のX線観測衛星「あすか」は、ろ座銀河団で ダークマターの分布をとらえた。 ダークマターは単一の物質からなるのではなく、 いくつかの物質からなるのではないかと考えている研究者もいる。

89: 一般相対性理論

   1916年に、アルバート・アインシュタインが提唱した重力理論。 重力は時間と空間(時空)の曲がりであることを重力場の 方程式であらわしている。つまり、時空が巨大な重力(質量)に よってゆがめられることを説明している。
   時空の曲がりは、遠方からくる星の光を曲げる。 地球からみる星の位置も、太陽の重力によってわずかにずれている。 巨大な重力をもつブラックホールはまわりの時空を 大きくゆがめるので、その近くを通ってきた光は 大きくゆがめられる。遠方の銀河の形がまったくかわって みえることもおきる(重力レンス効果)。
   一般相対性理論を宇宙そのものに適用すると、 膨張や収縮をする解が得られる。しかしアインシュタインは、 宇宙は時問的に変化しないと考えた。 そこで「宇宙項」を加えて、「静的宇宙」の解が 得られるように方程式を修正した。のちに、 ハッブルが膨張宇宙の証拠を発見し、 「宇宙項の導入は失敗であった」とアインシュタインにいわしめた。

90: 重力レンズ効果

   レンズで光が屈折するように、天体の重力によって 光が屈折される効果のこと。重力によって空間が 曲げられることは、一般相対性理論で説明されている。 銀河や銀河団など質量の大きな天体は重力も大きく、 まわりの空間を大きくゆがめる。そのため、 そこを通ってくる遠方の天体の光の経路か曲げられる。 その結果、遠方の天体の姿もゆがんでみえる。
   地球からみて、遠方の天体が重力レンズの中心軸上にあると、 天体の像は完全なリングになる。 これを「アインシュタイン・リング」とよんでいる。 中心軸からずれていると弧状の像ができる。 ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した深宇宙の画像には、 重力レンス効果を示す多くの銀河が映っている。
   近年、重力レンズ効果により二つの像に分かれるクェーサーを 利用して、ハッブル定数を求める研究が進められている。 これは、重力レンズを通る二つの光が地球に到達する時間のずれと、 レンズとなっている銀河の重力から計算される。